双極性(感情)障害に注意。治りにくい「うつ」は、双極性障害である可能性があります。
現在うつ状態でも過去に以下の軽躁状態の経験があれば、うつ病ではありません。
A. 高揚した気分が4日間続く
B. 以下の内3つ以上が持続
(1) 気が大きくなる (2)睡眠短縮 (3)多弁 (4)観念奔逸、次々アイディアが浮かぶ (5)次々気が散る (6)社会、性的活動の過剰 (7)快楽的活動に熱中
軽躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害を双極Ⅱ型といいます。明らかな躁状態のある双極Ⅰ型に比べ、見過ごされて「うつ病」と診断されて治療を受け経過不良になっていることが多く、注意が必要です。
未治療の双極性障害の経過を見ると双極I 型の人で3 分の1、双極II 型の人では約半分の期間を、うつ状態で過ごします。双極性障害では躁状態はごく短く、躁状態の患者の約半数は、現在自分が躁状態であるとの自覚を欠きます(Ghaemi)。うつが長いので、双極性障害の37%は単極性うつ病と誤診されている(Ghaemi)、外来うつ病の60%が実は双極Ⅱ型である(Benazzi)。という話もあります。
最近は診断に参考になる検査もあります。当院でも実施しているNIRS(光トポグラフィーもその1つ)は、うつ病と双極性障害の間で、感度(ある病気を正しく病気と判定する確率)69%、特異度(ある病気でない人を病気でないと判定する確率)81%で鑑別可能です。確実ではありませんが、詳しい問診に加えて検査をすれば、診断の補助として重要です。
双極性障害は周期的に気分の波をくり返し人生に大きな困難をもたらす病気ですが、正しい診断と気分安定薬を中心とした治療で、驚くほどよくなることのある病気です。あきらめずに力を合わせて治療し、回復、再発予防に努めましょう。